患者さんへ

B型肝炎HBV

感染経路について

B型肝炎はB型肝炎ウイルスが血液や体液を媒介として感染して発症する病気です。B型肝炎ウイルスの感染経路は、垂直感染(母子感染)と水平感染(性行為、注射、輸血、刺青、鍼治療など)に分けられます。母子感染については、1986年より妊婦健診を通して感染予防措置がとられるようになり、免疫グロブリン製剤やワクチンの接種の実施により90%以上防止できるようになりました。また注射や輸血についても、近年注射器や注射針の使い捨て、輸血のスクリーニングの実施等によりほとんど感染はなくなっています。日常生活において感染する危険はほとんどありません。B型肝炎ウイルスに感染している方は、カミソリ・歯ブラシなど血液が付着する可能性のあるものは自分専用にすることで血液を介した感染を予防することができます。また性行為時の感染はコンドームの使用やパートナーのワクチン接種で予防することができます。

自然経過について

B型肝炎ウイルスに感染すると、一過性の感染に終わる場合と感染が持続する場合(持続感染)があります。出産時・乳幼児の感染の場合持続感染になることが多いです。持続感染の場合、初期にはB型肝炎ウイルスは排除されず体内で共存していますが、自己の免疫力が発達すると体内から排除しようと、免疫細胞が攻撃を始め肝炎が起きます。一般的に10-30歳台で一過性に強い肝炎を起こし、80-90%の人ではその後B型肝炎ウイルスが少ない状態に変化し、肝炎が沈静化します(非活動性キャリア)。しかし10-20%の人は慢性の肝炎が持続し、場合によっては肝硬変・肝がんへと進行してしまいます(図1)。慢性肝炎や肝硬変の場合、非活動性キャリアに比べて肝がんの発症率が高いことが分かっています(図2)。

図1
図1
図2
図2

治療について

B型肝炎ウイルスは体内から完全に排除することが非常に難しいウイルスです。そのため現在のB型肝炎の治療は、ウイルスの増殖を抑制し、肝炎を鎮静化させて、肝硬変や肝がんへの進行を抑えることを目標としています。治療は主に核酸アナログ製剤という飲み薬の治療になります。また患者さんの状態に合わせてインターフェロンという注射製剤や肝庇護薬が使用される場合があります。このB型肝炎治療に対しては、公費助成制度があり、一定の条件を満たせば医療費の大幅な助成を受けることができます。実際の費用については収入により変動しますが、実質1-2万円の自己負担(図3)で治療を受けることができます。

B型肝炎に感染していないかどうか、一度は確認をしましょう

現在B型肝炎に感染しているかどうかは、健康診断、また病院や診療所でその検査を受けることができます。肝炎ウイルス検査を受けた方は必ず結果を確認し、もし陽性の場合は無症状であっても必ず医療機関を受診することが必要です。受診の必要性など相談がありましたら、肝疾患診療相談センターへご連絡ください。