肝がんについて
肝がんとは?
肝がんは肝臓自体から発生する原発性肝癌(95%が肝細胞癌)と多臓器から転移する転移性肝癌に大別されます。
原発性肝癌
- 肝細胞癌:肝細胞から発生(95%を占める)
- 胆管細胞癌:肝内の胆管細胞から発生(胃癌や大腸癌と同じ腺癌)
転移性肝癌
他臓器由来の癌が肝臓に転移したもの
肝がんの死亡率は2002年をピークに減少に転じていますが、部位別がん死亡数ではいまだ上位にあり、男性で5位、女性で6位となっております。2020年は年間約2.5万人が肝がんで死亡されており、完全な制御ができているとは言えない状況が続いています。
肝がんの原因
肝がんの多くは何らかの慢性肝疾患を背景に発生します。B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)に代表されるウイルス性肝炎、アルコールや肥満を背景とした脂肪肝などが代表的ですがその他自己免疫性肝疾患や代謝性疾患などが原因になることもあります。
ウイルス性肝炎
HBV、HCVの持続感染が原因で慢性肝炎、肝硬変を引き起こす。
HBVもしくはHCVを背景にできる肝癌が8割を占める!
脂肪肝(アルコール or 非アルコール)
アルコールが原因の場合には禁酒が必要です。
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の診断には肝生検が必要です。
自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎)
その他(代謝性疾患やうっ血肝)
近年は抗ウイルス治療の進歩などもありこれまで最多であったHCVを背景とした肝がんは減少傾向ですが、脂肪肝が原因の肝癌が増えており食生活の変容が原因と考えられています。当科における肝がん入院患者さんの背景肝疾患もこの10年で様変わりしています。
肝がんの診断
肝臓は沈黙の臓器ともいわれており、初期の肝がんでは全く症状がないことがほとんどです。ウイルス性肝炎、脂肪肝、自己免疫性肝疾患などの慢性肝疾患をもつ患者さんでは定期的な検査をうけることが早期発見・早期治療を目指す上で最も重要といえます。
血液検査: α-フェトプロテイン(AFP)、AFP-L3分画、PIVKA-Ⅱ
画像検査:
超音波検査:簡便で安全。造影剤(ソナゾイド®)による血流診断も可能。
CT検査:死角のない広範囲な撮影。ヨード造影剤による血流診断。
MRI検査:肝細胞特異的造影剤(EOBプリモビスト®)は肝腫瘍の診断に優れる。造影剤が使用できなくても信号変化による情報が多い。
組織検査: 出血リスクを伴うので画像診断で確定できない症例で検討される。
肝がんの治療
肝がんの治療には肝切除や肝移植、穿刺焼灼療法、カテーテル治療、分子標的薬など様々なものがあります。
外科治療
- 肝切除
- 肝移植
内科治療
- 経皮的穿刺治療:直接がんを針で刺して治療
- 経カテーテル的治療:肝癌の栄養動脈からの治療
- 薬物療法(分子標的薬)
放射線治療
- サイバーナイフ
- 陽子線治療
どの治療を選択するかは腫瘍の個数、大きさ、転移の有無、肝予備能(肝臓の働き具合)などを考慮して決定されます。腫瘍が3個以内で3cm以内の場合は根治的治療である肝切除か穿刺焼灼療法、3cmを越えてくると切除もしくは塞栓、4個以上と個数が増えてくると塞栓がメインですが、近年では薬物療法の選択肢が確実に増えてきており、早めに導入するという選択肢もあります。実際には患者さんの年齢や体力、日常生活動作なども考慮した上で総合的に方針を決定します。
また肝がんは再発の多い癌としても知られています。根治的治療を行った後でも慎重な経過観察を続けていくことが大事なポイントです。