C型肝炎について
C型肝炎とは
C型肝炎の原因はC型肝炎ウイルス(HCV:Hepatitis C virus)の感染です。肝臓の細胞に感染し、ヒトの免疫が感染した細胞を攻撃し、結果として肝炎を発症します。
ウイルスに感染すると、まず急性肝炎になりますが、そのうちの約70%はウイルスが排除されず慢性肝炎になります。いったん慢性化すると自然に治癒することは稀です。慢性的な炎症が続くことで肝臓は線維化を起こし徐々に硬くなっていきます。約20年で肝硬変、約30年で肝がんに至ると言われています。
HCV感染から肝炎へ
- ウイルス感染だけでは肝炎は起きません。
- リンパ球が攻撃を始めると慢性肝炎になります。
C型肝炎の症状
自覚症状があまりなく、そのため、ほとんどの患者さんは病気に気づかず、健診などで偶然見つかることが多い病気です。ただし、炎症が強い時にはだるさや食欲の低下があらわれます。また、肝臓が硬くなると(肝硬変)、手のひらが赤くなることや(手掌紅斑)、上半身の皮膚にクモのような形の拡張した毛細血管(クモ状血管腫)が出てくることがあります。男性では乳房が女性のように大きくなることもあります(女性化乳房)。さらに肝臓の働きが悪くなると、肝不全症状として、目や皮膚が黄色くなったり(黄疸)、お腹に水がたまったり(腹水)、意識障害があらわれたりする(肝性脳症)こともあります。
目で見える肝硬変の症状
- 手掌紅斑
- 手のひらが赤くなる。特に親指や小指の付け根
- クモ状艦種管腫
- 毛細血管がクモの足状に拡張する。
- 女性化乳房
- 男性の乳房が女性のようになる
- 黄疸
- 目や皮膚が黄色くなる
- 腹壁静脈怒張
- 腹壁の静脈が太くなり蛇行する
C型肝炎の検査
C型肝炎の診断
C型肝炎ウイルスに感染しているかどうかを診断するには、まず血液中にC型肝炎ウイルスに対する抗体があるかどうかを調べます。陰性ならC型肝炎ではありませんが、陽性なら現在あるいは過去にHCVの感染があることになります。
陽性の場合は、さらに血中にHCVの遺伝子(RNA)があるかどうかを調べますが、こちらも陽性ならC型肝炎に現在感染していることになります。
抗体が陽性でRNAが陰性の人は、かつてウイルスに感染していたものの、自然または治療によりウイルス消失に至ったもの、または、抗体検査偽陽性のいずれかと考えられます。
C型肝炎ウイルス検査の診断
1)HCV 抗体検査 | 2)HCV RNA検査 | |
---|---|---|
非感染者 | – | – |
過去に感染した人 | + | – |
現在感染している人 | + | + |
- HCV抗体検査
「抗体」とは、ウイルスの感染に反応してヒトが作るものです。そのため、現時点でのウイルスの有無に関係なく、過去に感染したことがあれば陽性になります。 - HCV RNA検査
ウイルスそのものを検出する検査です。そのため、陽性であれば現在感染していることを示します。
肝炎の活動性をみる
肝炎検査の基本となるのが、血中のAST(GOT)とALT(GPT)です。これらは肝細胞中に多く含まれる酵素で、細胞が障害されると血液の中に出てきます。
健康な方の血液中にもみられますが、肝臓に障害が起こって肝細胞が壊れると、血液中に流れる量が増えるため、値が上昇します。
従って、これらの値が高いほど肝細胞の障害が高度であること、すなわち肝炎が活発であることを示しています。
AST,ALTって?
ASTとALTは、いずれも肝細胞の中に多く含まれる酵素で、アミノ酸の合成に使われます。これまではGOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)、GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)と呼んでいましたが、最近は、GOTはAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、GPTはALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)と呼ぶようになりました。
病気の進行度をみる
肝臓がどれだけ硬くなっているか(線維化)は、C型肝炎の重要な指標です。線維化の程度はF0~F4に分けられており、F0が正常、F1が軽度、F3が高度、F4が肝硬変であることを示しています。F3、F4になると肝癌になる可能性が高くなるので注意が必要です。
線維化の状態を調べるには、肝臓に細い針を刺して肝臓の一部を採取する検査(肝生検)があります。もっと簡単な方法としては、血中の血小板を調べて線維化の程度を予測する方法もあります。血小板が少ないほど線維化が進んでいると推測でき10万/μL以下なら肝硬変の可能性が高いとされています。
肝線維化 | 血小板数 | 年間発癌率(%) | |
---|---|---|---|
軽度 | F1 | 15〜18万 | 0.5 |
中等度 | F2 | 13〜15万 | 1.5 |
高度 | F3 | 10〜13万 | 3.0 |
肝硬変 | F4 | 〜10万 | 7.0 |
肝癌を早期発見する
C型慢性肝炎は肝癌を合併することが多いので定期的に超音波、CT、MRIなどの画像検査を行う必要があります。線維化が高度の場合は3か月に1回、軽度でも6か月~1年に1回程度はスクリーニングが必要です。
肝がんを発見する検査のいろいろ
画像検査
- US(超音波)検査
- CT(コンピューター断層)検査
- MRI(核磁気共鳴)検査
- 血管造影検査
血液による腫瘍マーカーテスト
- AFP
- AFPレクチン分画
- PIVKA-Ⅱ
C型肝炎の治療
C型肝炎の抗ウイルス療法は近年目覚ましい進歩を遂げ、多くの患者さんでウイルス排除が達成できるようになりました。現在では、直接作用型抗ウイルス薬(DAA : Direct Acting Antiviral)という経口内服薬で、ほぼ100%でウイルス排除が可能となりました。治療期間は最短では8週間での治療も可能であり、また、病態が進行した非代償性肝硬変の患者さんでも治療が適応となりました。
他の薬との飲み合わせにより重篤な副作用が起きることもあります。そのため、専門的な医療機関での治療が望まれます。治療薬は一錠数万円と高価なため、国および県から医療費の補助を受けられる制度があります。これは各都道府県により手続きが異なる可能性があるため、詳細は最寄りの保健所にお問い合わせいただくか、各都道府県のホームページをご覧ください。
長野県に関しましては、長野県ウイルス肝炎医療費給付制度のホームページをご覧ください。
日常生活の留意点
日常生活では肝臓に負担をかけないことが大切です。規則ただしい生活をこころがけ、睡眠を十分とりましょう。適度な運動は体に良い働きをします。
食生活では栄養バランスをよくしましょう。カロリーを摂り過ぎると肝臓に脂肪がたまるので、過食にならないよう注意しましょう。食後は楽な姿勢でのんびりするとよいでしょう。
除鉄療法などで本格的に鉄を制限する場合は栄養士のアドバイスが必要です。
そこまでしない場合でも、日頃から鉄の多い食品を摂りすぎないようにしましょう。また、アルコールは発がんを促進するので避けてください。
健康的な食生活のために
- バランスよく栄養をとりましょう
- 鉄分を控えましょう
- 肥満は大敵!
- 減酒ではなく禁酒を!
いきいきとした暮らしのために
- 規則正しい生活を送りましょう
- 適度に運動しましょう
- 食後にはリラックスしましょう
- 十分に睡眠をとりましょう